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日本人初移住から140年。カナダ・スティーブストンの魅力

10/20/17 21:00 (ET)
Image: 日本人初移住から140年。カナダ・スティーブストンの魅力

 2017年で建国150周年を迎えるカナダですが、日本人が移民として初めてカナダに渡ってからちょうど140年。そのカナダで「日系人ゆかりの街」といわれているのが、バンクーバーの郊外にある港町・スティーブストンです。ブリティッシュ・コロンビア州にあり、バンクーバーから南に車で約30分、ジョージア湾に面した港街です。

 今回はそのスティーブストンの魅力をたっぷりとお届けします。人口およそ2万5000人のこぢんまりとした街ですが、豊かな漁場に恵まれていることからカナダ有数の漁港の一つです。19世紀後半、ここでは鮭漁が盛んに行われていました。鮭で一攫千金を当てようと、日本からも多くの漁師が海を渡り、当時は2000人以上の日本人が住んでいたといわれています。

 鮭漁と共に当時スティーブストンの産業を支えたのが、鮭の缶詰工場です。「Gulf of Georgia Cannery(ジョージア湾缶詰工場)」は、当時カナダで最大規模の缶詰工場で、多くの日系移民も働いていました。乱獲や冷蔵庫の普及などに伴い、缶詰工場は1979年に閉鎖され、今は、当時使われていた建物や機械を展示した国定史跡の博物館になっています。街の歴史が詰まった「ジョージア湾缶詰工場」は、毎年およそ6万人が訪れるスティーブストンの観光名所です。この博物館で マネジャーとして働く堀田ミミさんに、工場を案内してもらいました。

 まず、堀田さんは漁船の前でこう説明してくれました。

102017-1 「こちらは100年前にスティーブストンでよく見かけられた木造の漁船です。多くの日系人の漁師たちがこのような船で鮭を捕っていました。その後1887年頃に工野儀兵衛(くのぎへえ)という方が、和歌山県の三尾村からスティーブストンに移住してきまして、その方が地元からの漁師さんたちを多く呼び寄せ、スティーブストンで漁師さんとして活躍されるようになりました。日系人は元々漁師さんとして経験を持っていたこともあり、多くの缶詰工場が雇いました。日系移民のほとんどは、鮭漁の漁師として働いていましたが、漁は男性の仕事とされ、女性の多くは、缶詰工場で働きました」

 次に堀田さんは女性たちの作業場の前へ移動し説明を続けます。

 「奥さま方たちはクリーニング(Cleaning)という場所で作業を行っていました。この写真は1913年なのですが、昔は赤ちゃんを仕事場に連れてきて、おんぶして作業を行っていました。小さな子供たちも乳母車の横でずっと待っていたんですけれども、この子たちが8歳以上になりましたら、缶詰工場でアルバイトもしていたようなんです。(作業場の写真の水を指して)この水もフレーザー川から引っ張っている冷たい水ですので、もう本当に何時間も立ったまま冷たい水でお仕事をして、大変な仕事だったようなんです」

 日系人の歴史が色濃く残る街・スティーブストンは今、新たに観光地として注目を集めています。その中心となっているのが、フィッシャーマンズワーフです。 このフィッシャーマンズワーフについても堀田さんが教えてくれました。

 「漁師さんが釣った船から直接魚介類を買えるフィッシャーマンズワーフがあります。夏の間は毎日船が入ってきますけれども、秋・冬になりますと週末に多く漁船が港に来まして、新鮮なものが買えます」

 フィッシャーマンズワーフにいた漁船の船員の方にも話を聞いてみました。「これはPacific Gray Cod(マダラ)だよ。こっちは旬のレモンソール。毎日たくさん売れているよ。ソテーにすると最高だよ」

 スティーブストンの街には、トメキチ・ホンマ小学校、日系漁師像など、至る所に日本を感じるものが点在し、この街の魅力になっています。堀田さんはこの街の見どころについて、話してくれました。

102017-2 「スティーブストンの村があるリッチモンド市は、和歌山市の姉妹都市なんです。それを記念するために和歌山市から桜の木を何本か寄付され、毎年春に桜の並木が楽しめます。そこにも最初に来た日本からの移住者、工野儀兵衛さんを記念する日本庭園もありますので、同じGarry Point ParkでKuno Gardenという日本庭園が見られます」  その他にもスティーブストンには、昔の住居や建物がそのままの形で残っている博物館、「Britannia Heritage Shipyards 」があります。ここには日系人漁師の一家が住んでいた家が保存され、当時の日系移民の暮らしぶりを知ることができます。

 最後に堀田さんに、この街の住み心地について聞いてみました。

 「(スティーブストンは)昔から日系人たちと一緒に働いたり、生活している人たちが多く住んでいるコミュニティーです。違和感のないマルチカルチュラルなコミュニティーですので非常に生活しやすいです。バンクーバーにいらした際には ぜひ一足伸ばして、こちらスティーブストンの港街へお越し下さい」

 カナダでは建国150年を記念して、全ての国立公園や国定史跡が、今年いっぱい入場無料になっています。皆さんもこの機会に、足を運んでみてはいかがですか。
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