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故・蜷川幸雄の代表作「Ninagawa ・マクベス」NY公演

07/27/18 21:00 (ET)
Image: 故・蜷川幸雄の代表作「Ninagawa ・マクベス」NY公演

 日本を代表する舞台演出家、蜷川幸雄さん。2年前に亡くなってしまいましたが、その蜷川さんの代表作「Ninagawa ・マクベス」が、先日ニューヨークのリンカーンセンターで上演されました。今回はその公演の模様と、主演を務めた市村正親さんのインタビューをお送りします。

 「Ninagawa・マクベス」はシェイクスピアの「マクベス」を、せりふと人物設定はそのままに、大胆に日本の安土桃山時代に移し替えて描きました。主人公マクベスを演じたのは、市村正親さん。野心家の妻・マクベス夫人を演じたのは、田中裕子さんです。

 「マクベス」はシェイクスピア四大悲劇の一つ。武将マクベスが夫婦で国王を暗殺し王位を奪いますが、不安にさいなまれて転落の一途をたどるというストーリーです。舞台を覆う仏壇のセット、桜吹雪が舞う演出など、蜷川さんの美意識が隅々まで貫かれた名作です。

 この公演は「Ninagawa・マクベスをアメリカで観たい」という声に応え、リンカーンセンターが英語字幕を付けて上演しました。劇場ではこの作品を待ちに待ったたくさんの観客が連日客席を埋め尽くしました。観客に感想を聞きました。

072718-1  「シェイクスピアの原作をユニークに描いただけでなく超越した美しさがありました」「台詞、美術、音楽、すべての演出に引き込まれました。蜷川さんは巨匠だったんですね」「マクベス役が素晴らしかった。特に感情表現がね」

「Ninagawa・マクベス」で主役を演じた市村さんにお話を伺いました。市村さんはアメリカでの公演は初めてだそうです。  「『Ninagawa・マクベス』でニューヨーク公演ができたってことは、僕の人生の中ではやっぱり大変幸せな部分がありますね。本当は、蜷川さんと一緒に世界ツアーしたかったんだけど。蜷川さんが亡くなってからこうやってニューヨークで公演できるってことは、天国で蜷川さんが全部采配してるのかなっていう気がして、蜷川さんにありがとうっていう感じですね。リンカーンセンター、2500人入るんですけど、満杯なんですよね。それはやっぱり『Ninagawa・マクベス』っていう蜷川さんが長年培ってきた功績かなと思っています」

072718-2  日本の様式美を至るところに散りばめた「Ninagawa ・マクベス」。その魅力をお聞きしました。
 「日本人の持つ、桜の持つね、華やかでありなおかつ切ない生き方っていうのかな。束の間の輝きっていうのが桜にも象徴されているし、マクベス夫妻にも束の間の天下じゃないけどね。そのへんが、こう『Ninagawa・マクベス』の魅力なのかなって感じがしますけどね 」

 市村さんは蜷川さんの厳しい愛の鞭を受けながら、一緒に数々の名作を作り上げてきました。「Ninagawa・マクベス」は、2人が追求した「様式美」と「リアルさ」が結実した舞台となりました。市村さんはこう続けます。

 「様式美とリアルの中で生きなくちゃいけない。その両方が上手く重ね合わさった時に蜷川マクベスになるというようなことは常に言われていました。だから今やっているマクベスは、蜷川さんはきっと天国で、『いっちゃん、ようやくここまで来れたね』っていう風にきっと言っていると思いますよ。僕へのご褒美でしかないなっていう風に思っていますよ」

 蜷川さんの思いを引き継いだ市村さん。日本の精神性を吹き込んだ「もう一つのマクベス」を多くの外国人にも観てもらいたいと願っています。最後に市村さんはこう話してくれました。  「蜷川さんの作ったこの『Ninagawa・マクベス』を世界の大都市でね、見せてあげたいなっていう気がします。僕のマクベスで(笑)」

 感激した辛源は、「僕も観に行ったのですが、桜吹雪などアメリカの舞台ではめったに見られない日本の美学が際立っていました。ニューヨークのお客さんにとっても、とても新鮮な観劇体験になったのではないかと思います」と感想を伝えました。
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