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日本のおいしいイチゴをアメリカへ

03/19/21 20:00 (ET)

今週も、日本ならではの技術によって開発した、優れた食品を海外へ展開しようとする日本人を紹介します。今回は、品種改良や栽培技術の向上によって、見た目も甘さも世界トップクラスの品質を誇る日本のイチゴです。

「OISHII」と書かれたこのイチゴが作られているのは、マンハッタンの絶景を臨めるニュージャージー州カーニーの倉庫の中にある植物工場と呼ばれる施設です。

植物工場とは、太陽光を使わず、室内でLEDライトを使い、温度や湿度、空調など管理された環境の中で農作物を育てる施設です。

畑で農作物を育てるのと違い、気候や場所を選ばず、年間通じて作物を安定して作れるため、次世代の農業として近年注目されています。

アメリカで初めて、イチゴの植物工場を立ち上げた、古賀大貴(ひろき)さん。日本で農業関係のコンサルティングをしていた古賀さんは、留学中に日本のおいしい農作物をアメリカに広めたいと思い、「OISHII FARM」を立ち上げました。

数ある作物の中、イチゴにこだわったのには理由があったそうです。

「イチゴやトマトのような、葉ものではないものを作れた人が、植物工場で技術的に一番優れている会社だということが、この業界のコンセンサスとしてありました。誰もできない所に、最初は時間はかかるかもしれないけれども、参入することによって、うちしかできない技術を確立して、どんどん他の作物にも展開していけるっていう、一番難しい作物だったからっていうのが一つ。もう一つは、とんでもなくおいしいイチゴとか、とんでもなくおいしい果物って、何倍も値段がやっぱりつきやすいので、ビジネスの持続可能性っていう意味でやっぱりすごく魅力があったのがイチゴになります」

イチゴは小さい苗から育て、花を咲かせたら、受粉させ、次に実を育てます。多くのステップに加え、これまで難しいとされてきた植物工場内のハチによる受粉のプロセスに成功しました。

古賀さんは、「ハチは、植物工場環境下でコントロールするのがすごく難しいとされてきて、まず一つに病害虫を持ち込むリスクっていうのもありますし、あとすごく繊細な生き物なので、自然とちょっとでも違うと、ちゃんと働いてくれないんですよね。研究を重ねていくうちに、どうやるとハチが自然の中にいるか錯覚する状態を作るかということに開発を成功しまして、見つけたというところが大きいかなと思います」と解説してくれました。

栽培しているイチゴは、香りが良く、甘みの強い日本の品種です。糖度は10度以上。アメリカ産を大きく上回ります。今まで誰もなし得なかった、植物工場でイチゴを安定的に量産することに成功した古賀さん。このイチゴに「OISHII BERRY」という名前をつけました。

「これは日本の農作物なんだということを世界に知って欲しいっていうこと、あとですね、植物工場って元々日本のお家芸なんですよね。日本の大企業さんがいっぱいお金と研究費をつぎ込んで作った技術で、これは日本の農作物で、日本の技術なんだよっていうのを、こう世の中の人にしってもらいたいってことがあって、『OISHII』という社名を残しています」と古賀さんは話します。

値段は1パック8個入りで50ドル。今では、手に入れるのが困難なほど人気ですが、商品を知ってもらうまでには、苦労があったそうです。

「ドブ板営業というかですね、基本的にはドアノックして、イチゴ食べてくださいっていう風にやりました。本当に有名なシェフっていうのは、そもそもドアノックにすら出て来ないので、最初はそれにすごい苦戦しました。とっさにアポがありますって言っちゃったんですよ、1回。そうしたら、意外にすんなり奥までどうぞっていう風にいってくれて、キッチンまで入っていって、実際そのシェフが来た時に、『あなた誰ですか』っていう話にもちろんなる訳じゃないですか。でもその時に、『まず話を聞いてください』ということで、これをパッと見せたら、やっぱり職人なので、特にミシュランの星付きのシェフというのは、アポがあろうがなかろうが、何か凄いものがあるなって思ったら興味をひかれるんですよね。そこから、とりあえず1個食べてあげるよっていうことになって、食べて、その場でその場で商談が決まるっていうことがまぁあったんですよね」

それ以来、ニューヨークのシェフやグルメたちに愛されています。人気レストランABC Vのエグゼクティブ・シェフ、ニール・ハーデンさんもこのイチゴを愛用している一人です。

ハーデンさんは、「他のイチゴと比べて香りがとてもいい箱をときけた時の香りが抜群だ。そして舌触り。最初に食べたときに柔らかくて、口の中で溶けていく感じがあった。ただ甘いだけではなく酸味もありバランスが良く複雑な味わいだ」とOISHII BERRYについて語ってくれました。

日本のおいしいイチゴを植物工場で量産し、アメリカで販売するという夢を叶えた古賀さん。次のステップは、より多くの食卓へ、日本のイチゴを届けることだそうです。

「これまでは、マンハッタンで売られていた高い高級イチゴとして知られていたんですけれども、これからもう少しリーズナブルなプロダクトも入れながら、生産量を一気に増やして、世界中の人たちにおいしいイチゴ、イチゴ以外にも研究開発しいますので、美味しいイチゴから、それ以外の作物までに広げていって、『OISHII FARM』のOISHIIというレーベルついた作物が世界中で誰でもリーズナブルに変えるような将来を目指しています」

すでにアメリカのいくつかの都市で工場を作ることが決まっているそうです。古賀さんの作ったイチゴを全米中で食べられる日も近そうですね。

長年にわたり放送してきた「テレビジャパンCLUB」ですが、今回で最終回となります。皆さま、今まで応援いただき、本当にありがとうございました。

いつかまた会えることを願ってます。
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