さて、新型コロナウイルスの感染拡大は、さまざまな業界に打撃を与えていますが、なかでも飲食業界は深刻な状況に立たされています。そんな中、生き残りをかけて試行錯誤する日本食レストランと、彼らを救おうと立ち上がった支援相談窓口についてご紹介します。
ニューヨーク・レストラン協会によると、8月のレストランの売上げは昨年に比べて、およそ半分までに落ち込み、今後、何かしらの援助がないと64%の飲食店が2021年までに倒産を余儀なくされる可能性があるという調査結果を発表しました。
4年前、ニューヨークにオープンした日系大手ラーメンチェーン「一蘭」もその一つ。生き残りをかけて試行錯誤しています。「一蘭」といえば、横に仕切り壁がある独特の客席。コロナ禍の今、理想的なつくりに見えますが、店内飲食が許可された今も屋外のみで営業しています。

一蘭USA NY地区ディレクターの米屋聡さんにお話しをうかがいました。「ニューヨーク市からさなざまな条件というのが提示されているんですが、その中で中央換気システムの中にフィルターを指定のものに変えなければいけないというのがございます。このフィルターの入手が非常に困難になっているようで、やはりお客さまの安全ということを考えますと、しっかりフィルターを設置してからの営業が必要ではないかということで、一旦、屋外営業のみをさせていただいております」
営業が大幅に制限される中、少しでも収益を上げることを考え、一蘭としては初の試みとなるテイクアウトをスタートしました。味のクオリティーを守るため開発には苦労したそうです。
米屋さんは、「一般的にラーメンというものは時間が経てば経つほど、商品の劣化が進みますので、職人の皆さんが、どうすればデリバリーでも自宅で美味しく食べられるかと研究を重ねてくださいまして、今回ようやく、納得のいく麺が完成いたしましたので、こちらを展開させていただく運びとなっております」と話してくれました。
この他にもウェブサイトやSNSで、一蘭のインスタントラーメンキットを全米に向け販売しています。いままでは、お土産用として売られていた、物販に力を入れることで、この苦境を乗り越えようとしています。
こうした状況を救おうと日本企業の海外展開支援などを行なう、JETRO(日本貿易機構)が、「レストラン相談窓口」を立ち上げ、一蘭をはじめとする日本食レストランの支援に乗り出しました。この相談窓口では、SNSやデリバリーアプリの使い方、デリバリーに適したメニュー開発、店内飲食再開に向けた準備、資金調達のアドバイスや労務管理など多方面にわたってサポートしています。
JETROロサンゼルスディレクターの栗山藍さんに、どんな相談が多いのかを聞きました。「一番多いのが、SNSやデリバリーアプリの導入など、デジタル化についてのご相談です。あとは常に多いのがローンの関係ですね。どんなローンが世の中に存在しているのか、申請方法はどうしたらいいのかという相談がとても多いです」
ロサンゼルスで割烹を営む「ふく乃」のご主人も、ロックダウンで休業を余儀なくされ、JETROの窓口へ相談しました。
オンラインの相談での栗山さんからのアドバイスは、「お店が開いているか、開いていないかって、私たちもそうなんですけども、Yelpとかを見て開いてるのかどうかっていうのは、一応確認するんですよ、日本人でも。開いてますっていう写真だけでも入れておけば、もしかすると気にしてらっしゃる方はこれで確認してお店行かれるかもしれないので」といったものでした。それを受けて、ご主人は「いろいろ、手を尽くしてみます」と返答しました。
相談後に新たな試みに挑戦し、少しずつ結果が出ているお店もあるそうです。当初は、「うちはテイクアウトはやらない」と言っていた店に対しても、栗山さんは、「テイクアウトのメリットだとか、ご主人がテイクアウトの営業を始めて、ご負担がない方法にはどうしたらいいか」といった提案をしたそうです。
そうした提案を受けて、お店ではテイクアウトを開始しました。「段々、お客さんにもそれが周知されていって、テイクアウトされる方が増えていっています。さらに、このお店についてはSNSの活用の方法をご存知なかったので、一緒にインスタグラムの立ち上げをされました。最近は、おすしの写真だとか、新鮮なお魚の写真だとかを投稿されて、徐々にフォロワーなども増えているという状態です」

窓口では、いろいろな相談に対応できるよう、飲食業界の知識を有するまざまな専門家に協力してもらっています。マーケティング専門で、MIW Marketing & Consulting Group Inc. CEOの岩瀬昌美さんは、すぐに始められるアドバイスを心掛けています。
「手書きでもいいので、大きく『We are open』って書いて、風船でもバーってつけてみましょうって。そうしたら、お客さん立ち止まってくれるかもしれませんよって言ったら、次の日にやりましたと。そうしたら、『開いてるんだね』ってお声掛かったっていうのがあるので、できるところから前向きにしていただくということをお話させていただいています」
こうした支援を受けながら、何とか苦境を乗り超えようと頑張っている日本食レストランですが、消費者である私たちにもできることがあるといいます。それは、現在、主流になったデリバリーアプリを使わずに、お店で直接注文することです。
岩瀬さんは、「やっぱり今アプリ、アプリって言うんですけど、結局アプリは15%、20%とられてしまって、レストランって、そんなにハイマージンじゃないので、ここがサポートしたいなという所があったら、お電話して、直接そこだけにお金が落ちるようにしていただくと、いいのかなと言うふうに思います」
ジェトロが行なった最新調査では、売上げが80%程度確保できている日本食レストランの多くは常連さんによって支えられているそうです。
まだまだ厳しい状況が続く飲食業界ですが、私たちに出来るサポートをしていきたいですね!