新型コロナウイルス感染拡大(パンデミック)の影響で在宅勤務になり、生活スタイルが変わった、という方も多いかと思います。そうした中、アメリカでは都市部から郊外へ移り住む人が増えているんです。今日の特集では、コロナ禍における不動産事情をお伝えします。
最近の世論調査によると、パンデミックにより都市部に住むアメリカ人のおよそ40%が、郊外に移住を検討しているといいます。
特に、家賃が高いニューヨーク、サンフランシスコ、ロサンゼルスなどの大都市に住む人が、続々と郊外や他の州へ引っ越しており、ニューヨークではマンハッタンからのアクセスが良く、より広いスペースが確保できる、ニュージャージー州に移住する人が増えています。

今ホットな地域となっている、リダック・ニュージャージー住宅担当エージェント、古姓(ふるしょう)美智子さんに最新の動向をうかがいます。
「不動産価格、一軒家の価格が上がってますね。売買は一軒の新しいリスティングに複数のオファーが殺到するような形になっています。まるで、何というか、カルタ取りみたいな形になってます。安全性を一番に皆さん求めてニュージャージーに移動していると思います。その安全性ということに関わるんですけれど、人口密度の低さ。やはり、空間が十分にあるというところだと思いますね。それと、利便性が高い、日本のマーケットとか、そういうものがたくさんありますんで、日本人の方にとって住みやすいということもあります」
郊外の一軒家の需要が増え価格が上がっているのとは反対に、マンハッタンでは空き家が増えており、その影響で賃貸価格は去年と比べて、およそ13%下がっているといいます。
例えば去年9月の1ベッドルームの平均家賃は、およそ3400ドルだったのが、今年は2900ドルにまで下がっています。さらに、入居者を誘致しようと、2〜4カ月分の家賃を無料にするオーナーもでてきています。
一方、カリフォルニア州サンフランシスコではどんな変化があるのか、リダック・ゼネラルマネージャー、サンフランシスコエリア担当、金子さと恵さんにうかがいました。

「Covid-19以前はですね、市内の家賃が高いという理由で引っ越しされるケースも多かったんですけれども、現在はですね、高収入の方も郊外に移動されるとお聞きしてます。やっぱり都市部のですね、メリットというのは人と関われるとかですね、若い方では、ナイトライフが楽しめるということになると思うんですが、そのメリットがやはり今の現状でできない。レストランで食事さえできない。となりますと、賃料の安い郊外を選ぶかと思います。サンフランシスコ市内の家賃価格の変化なんですけれども、先月の比較としても5%前後は、家賃は下がっています。前年度と比較した場合ですね、1ベッドですと15%以上落ちたというご報告もございます。ただ、サンフランシスコ郊外の家賃は、前年と比較して落ちている印象はあまりありません」
コロナの影響で新しい生活スタイルになった今、一番人気があるのはどんなタイプの家なのか。全米で共通する点がありました。
金子さんによると、「現在1ベッドだった方は2ベッド、2ベッドだった方は3ベッドというように今までよりも『部屋数が多い物件』を選ぶ傾向があります」ということです。
一軒家やタウンハウスなど、部屋数が多く、地下室や裏庭などを備えた家が人気だといいます。
古姓さんは、「大体3ベッドルームというのが、基準になります。寝室が三つあってリビングルームがあって、キッチンがあって、そしてできればベースメントがあって、それに加えて側々の庭がある。そういったものが求められてきていますね。奥さんは奥さん、ご主人はご主人の各部屋を持って、そこで仕事ができるお子さんがオンラインスクールをする上で邪魔にならない空間、そういったものを求めていらっしゃると思います」と話してくれました。
そして、コロナ禍に新しく家を契約するにあたり注意しなければいけない点は、これまで以上に「時間がかかる」ことです。
例えば、オープンハウスは1組ずつソーシャルディスタンスをとって行うので、外で待機することがあります。物件によっては、内見の前にコロナの感染者の多い場所に14日間行っていないことなどを証明するフォームにサインをする必要があったりします。
また、ソーシャルセキュリティーオフィスなど政府公共機関の営業が制限されていることで、家を借りたり購入する際に必要なドキュメントの請求にも時間がかかったり、銀行のローンの審査にもこれまで以上に時間がかかっています。
しかし、コロナ禍の今が逆にチャンスでもあるといいます。
古姓さんは、「ローンの利息が低いということです」と話してくれました。「わたし自身も長い間の経験を持つエージェントなのですが、覚えている限りで、これほど低い利子というのは、経験したことがありません。今現在、低いところでしたら2.5%、30年の固定ローンというのを出しているバンカー、レンダーがあるんですけど、ちょっと驚きですよね」といいます。
そして、家を売りたいと考えている人も今がチャンス。需要が高まっているので、売りたい希望価格で売れる可能性が高いんだそうです。
買い手にとってはローンの利息が低く、売り手にとっても、家の価格を下げずに売ることができる。引っ越しを考えていたら、今がチャンスかもしれませんね。
在宅勤務でどこでも仕事ができるようになった今。生活環境を整えたいという人々の動向が不動産市場や住宅スタイルに影響を与えているんですね。