ニューヨークで、来月からプラスチックのレジ袋が禁止されるなど、世界各国でプラスチックを規制する動きが加速しています。そんな中、環境に優しい素材として“竹”が注目されています。今日は、さまざまなものの素材として使われる、竹の魅力をお伝えします。
ニューヨーク・ブルックリンのこちらの店、「Package Free(パッケージフリー)」は、「Zero Waste(ゼロ・ウェイスト)」、ゴミを出さない雑貨店として今注目されています。

店で販売している日用品は全て、木やコットンなど環境に優しい素材でできています。中でも最近特に力を入れているのが、竹製品です。竹のストロー、カトラリー、ばんそうこうから、トイレットペーパーに至るまで竹でできています。今一番人気は、竹の歯ブラシです。
アメリカで1年間に使い捨てされている歯ブラシはおよそ20億本。それをプラスチックから竹に変えるだけで温暖化防止の力になれるということもあり、身近なところからできる取り組みとして人気だといいます。
なぜ竹はさまざまな素材として利用されているのか、それはその特徴に理由があります。
竹は芽が出てわずか数カ月で立派な竹に成長します。その速さは木の30倍といわれています。また抗菌作用があり、加工がしやすく、温室効果ガス削減の効果があるといわれています。そして、海に流出しても微生物によって分解されます。
さらに竹は、日用品だけでなく、アートの素材としても使われています。2017年から翌年にかけてニューヨークのメトロポリタン美術館で竹工芸作品のエキシビションが行われ、日本の現代作家、四代田辺竹雲斎(ちくうんさい)さんのインスタレーションが話題を集めました。竹の持つ生命力やしなやかさを壮大なアートで表現したこの作品は、多くの観客を圧倒しました。使われた竹は99%再利用され、また次のエキシビジョンで使われるので、エコアートとしても注目されました。
そして、今月6日。ニューヨークのジャパンソサエティで、日本の別府竹細工をアピールするイベントが行われました。
別府市の川上隆副市長はイベントで、「今回、別府が誇る竹細工をぜひ皆さまに知っていただきたいと思い、ここニューヨークにやってまいりました」とあいさつしました。
大分県別府市は江戸時代より温泉地として名が広まり、湯治客が使うカゴやザルに竹が用いられるようになりました。これらが土産ものとして注目され、竹細工の生産が活発になり、地場産業となりました。大分県は竹細工に使われるマダケの生産が全国一。竹細工に適した良質な素材に恵まれています。
別府竹細工を紹介するためイベントでは、伝統工芸士の大谷健一さん、清水貴之さんが「大四海波(おおしかいなみ)」という、花かごの製作実演を行ないました。別府竹細工の特徴は、奈良時代から受け継がれる「編組(へんそ)」と言う技法。全て手作業で編みあげます。作り始めて30分で、大四海波が完成しました。お二人に竹の魅力をうかがいました。
大谷さんは、「アメリカの皆さんにですね、日本の竹、別府の竹はこんなに繊細で物作りができているんだというところをアピールしたいですね。陶器とガラスに比べるとその重量は3分の1くらいですね。それと長持ちする。竹っていうのは3年で材料として使えて、ほっといても自然に還っていくというような素材なので、今一番時代にマッチしているなと改めて思います」と語ってくれました。
清水さんは、「編むのも、手だけで編むので、人間が手だけを使って、テクニックで一つものを作り上げる。素材は竹だけであるという。竹のこととかこういうことをしている人間がいるってことを知っていただければいいかなと」と言います。
そして別府市は新たな取り組みとして新製品の開発も行なっています。伝統的な技術を継承しながら、現代のライフスタイルに合った竹製品を発表しました。

お出掛け用の「かごバッグ」と竹細工の編み目が際立つ「花瓶」です。これらの商品はニューヨークのセレクトショップ、「H.P.F, CHRISTOPHER」で販売されています。
イベントのレセプション会場には別府市が所蔵する貴重な竹細工の工芸品などが展示されました。
イベント参加者に話を聞きました。「環境に優しい竹は何でも使えます。竹を使った日本のもの作りの技術に興味があります」「竹の素晴らしいところは 編み方を変えるだけで、時代に合った形に変化できるところです。とてもクリエーティブだと思います」
軽くて長持ち、環境にも優しい竹の製品がこれからも北米で目にする機会が増えそうですね。